「財布」


皆様、大変ご無沙汰いたしております。

気が付くと、かれこれ2ヶ月も日記を更新しませんでした。

3月~4月は、年度末ということで色々と忙しかったのは事実ですが、
実を言うと、日記を書こうという意欲が削がれる程のショッキングな出来事がありました。

・・・と言っても それ程重い話ではありません。
いつものように軽いお気持ちでお読みください(笑)

 

3月中旬に行なわれた、以前所属していた医局の送別会でのエピソードです。

久し振りに医局の面々と顔を合わせたのですが、後輩~先輩に至るまで
僕のホームページを見てくれている人が結構いるらしく、
 
「お前の日記は、もはや漢方とは関係ないものになってしまっている。」
 
というお褒めの言葉(?)を沢山いただきました。

そういう積もる話があったせいか、お酒が進んでしまい、
お開きになった時は、ほろ酔い気分になっていました。

時計を見ると終電間際のタイミング。

周りは、2次会に行く雰囲気ではないけれどザワザワしているといった具合。

最初から、遅くなったらタクシーで帰ろうと思っていましたが、
周りの雰囲気を見て、2次会は無いなと思ったとたんにタクシー代が惜しくなり、
挨拶も早々に駅のホームへ急ぎました。

駅の改札を過ぎた時、僕の乗りたい電車が入って来たのが分かりました。

急いで階段を上り、小走りで電車に飛び乗った瞬間、
 
「ペタッ。」 
 
何か平たいものが地面に落ちたような音がしました。

と、同時に電車のドアが閉まったのです。

まさか・・・と思いすぐに自分の手荷物を確認したところ、
僕の長財布が無くなっているのが分かりました(!)

その頃には電車が走り出していたので外の状況は見えませんでしたが、
9分9厘 僕の財布がホームに落ちたのに違いないと確信し、
生まれて初めて、真剣に『緊急停止スイッチ』を押そうかと悩みました。

実はその日、僕の財布には、身分証明書と各種カード、
それから翌日に業者に支払うためにかなりの額の現金が入っていたのです。

金額は、恥ずかしくて言えませんが、
『緊急停止スイッチ』を押そうと思うくらいの額です・・・。

また残念な事に、僕が乗ったのは準急で、次の停車駅は3つ先の駅です。
早く帰れるからと飛び乗った準急が、完全に仇となりました。

ようやくその駅に停車し、祈る気持ちで駅員室に駆け込んで、
○○駅のホームに長財布があるかどうかを確認してもらいました。

その結果は・・・・・「そのような財布は見つかりません。」

その瞬間、ほんの数十分前までは楽しかった気分が、
一瞬にして奈落の底に突き落とされました。

『誰かが持っていったんだ・・・。』

その時、各駅停車がやってくるというアナウンスが聞こえました。

『もしかしたら、僕の財布を持っていった犯人(?)が、
 ニヤニヤしながら財布を物色しているかも知れない。』

そんな希望にも似た妄想をしてしまい、
その電車の先頭車両から最後の車両までのすべての乗客の姿を確認しました。

しかし、どの乗客も穏やかな顔をされておりました。  犯人は居なさそうです。

さすがに『万事休す』です。
念のため、最寄りの交番に紛失届を提出しましたが、当てにはならないでしょう。

僕はこの時点で、もうお金のことは諦めました。が、
1万2万なんて額ではなく、十分過ぎるくらいの金額が入っていたのだから、
せめて、免許証や保険証だけでも返してもらいたいと願っていました。

しかし、財布を無くしてから数日経過しても、一切連絡は来ません。

もともと治安が悪くて名高い街(?)でしたが、
それ以降、僕はその街もその駅も大嫌いになりました。

 

そんなエピソードから約1カ月ほど経過し、身分証明書関係を再発行し終え、
ようやく傷が癒えはじめた頃、僕宛てに1通の葉書が届きました。

それは、財布を落とした地域の警察署からで、
「あなたの物と思われる財布を預かっているので受け取りに来て下さい。」
というものでした。

『えっ?』

『各種手続きが終了した今更、財布とカード類が帰ってきてもなぁ~』

などと思いながら警察署に電話してみたところ、
なんと、現金も入っているとのことでした!!

もう、僕の頭の中はパニックです。

財布を拾った1ヶ月後に警察に届ける人って??
良心の呵責に耐えきれなくなったのでしょうか?

早速、警察署を訪ね、財布が見つかった詳しい経緯を聞きましたが、
なんと、拾ったのは駅員さんでした。

信じられないことに、僕の財布は駅のホームでなく線路脇に落ちていたのです。
それを、1ヶ月後に線路の整備をしていた駅員さんが見つけてくれたのです。

しかも、この駅には屋根があるので財布は全く汚れておらず、
加えて、発見者が駅員さんなので、拾得に対するお礼もしなくていいそうです。

正直、キツネに抓まれた心境でした。

ということは、僕は居もしない犯人を勝手に作り上げ、
勝手に怒り、勝手にその街とその駅を嫌いになっていたのです。

ホント、馬鹿ですよね~僕って。

今でも、あの各駅停車にご乗車されていた皆さんの穏やかな顔が忘れられません。

 
2009/04/23更新


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